原発はベース電源という幻

福島の一件以降、有名無名に関わらず多くの方が電力問題についてブログ・ツイッター等で発信をしており、はてブでも人気のエントリーになってます。その中で"ん?"と思われることがいくつかありましたので、指摘がてらまとめておきたいと思います
1.ベース電力とピーク電力の区分けはさほど意味がない
ここが典型なのですが、『原子力はベース電力、火力はピーク電力。原子力をなくすならベース電力をどうまかなうのか?』という話がよくあります。しかしながらこのベースとピークという区分けにはあまり意味がない。
電力会社は需要特性(夜間は減り昼間は増える)に対し最も経済的な運用をしている、それだけのことです。ここのエントリーで各電源別の実際の原価を整理しましたが、これを参考に箇条書きにまとめます
原子力変動費(燃料費等)が著しく安く、原価の大半が固定費(投資回収・維持費・諸経費等)である。固定費は発電量に関わらずほぼ一定であるため、原子力はなるべくフル発電を志向した方が"発電単価”は安くなる
・火力は変動費分が高く、固定費の割合が少ない。よって”発電単価”は発電量が変わっても(原子力に比べて)変わらない
・以上の電源特性を考慮すると、『原子力はなるべくフル発電し、需要調整は火力で行う』ことが経済的な運用である
それと、夜間は原子力の電気が余っているという話もよく取り上げられますが、実際は夜間も原子力だけでは足りず、火力を使用しています。これも箇条書きで証明します
東京電力原発能力は1757万KW(福島第1=496.6万KW、福島第2=440万KW、柏崎刈羽821.2万KW)、日本原子力発電の東海第二110万KW(すべて東京向けと仮定)を加えても供給力は1867万KW
東京電力の電力使用量グラフの3/31付の前年同日をみると夜間の最低でも2800万KW使用している。電力使用量の少ない春先でも原子力だけでは足りない
・この差約1000万KWは火力と水力で供給している。水力能力は216万KW(ここから揚水発電除いた)ですので、800万KWは火力
・実際には原発は年1回の定期検査があるため、火力比率はもっと高い
原子力が出力調整がやりにくい。これは事実としてあるでしょう。しかしながら出力調整をすることに経済的なメリットが薄く必要性がないのです。さらに言うなら、原発が無くなったとしてもその条件下の元で最も経済的な電力運用を行う。ただそれだけのことです。すべては経済性の問題
次は、『太陽光で東電が大損してる』とかその辺のお話