電力自由化が進まないワケを解説しよう(その1)

大層なタイトルをつけましたが、電力自由化が進まない理由はいくつかありますが、制度的な話をしたいと思います。今回は『30分同時同量』について。
計画停電ですっかり有名になりましたが、電気はためることができないし不足すれば大停電となります。つまり、電気は常に使用している量と発電している量が同じなのです。よく、”電気が余ってる”などと言いますが、正確には”発電所に余力がある”ということであり、実際に使用量以上に発電しているわけではありません。使用する側は勝手気ままに電気を使うので、発電所側で調整する必要があるのです。
では、新たに電力事業を開始することを考えてみます。お客様を探して電力を供給する発電所を設置します。送電線は電力会社から借用することになります(この借用費用が高いというのが問題だったりするのですが、それはまた別で)。当然、発電所はお客様の使用量に応じて発電する必要があります。しかしながら、発電所でトラブルが起こった場合はどうなるのでしょうか?停電になるのでしょうか?
停電は起きません。なぜなら、電力会社の発電設備には使用量に応じて発電量を自動的に調整する装置がついてるからです。送電線を共用している以上、他の会社の発電所のトラブルであっても、電力会社側の発電設備が自動的に電気を補填することになります。電力会社って親切ですね。ソフトバンクの電波が届かないところでも、ドコモが代わりにつなげてあげますよ!みたいなものですね。しかし、この電気、ぼったくりの価格です。ここ(負荷変動対応電力)に記載してますが、30〜40円/KWh。市場価格が10円〜25円/KWhですので、2〜3倍というところ。
新規の電力事業者は『30分単位で使用側の電力量の±3%以内』で供給できなければ、不足の場合は電力会社から高額な補填電力を買わされます。そして発電しすぎた場合はなんと0円/KWhでしか電力会社はひきとりません。これが30分同時同量のルールです。
一見このルール、極めて正当であるように思えます。しかしながら、新規の電力事業者はシェアたったの2%程度。残りの98%は電力会社なのです。電力会社にしてみれば、個別の客がどんな使い方をしようとも、まとまってしまえばたいした変動ではありません。ただでさえ、調整がたいへんな新規事業者にたったの3%しか許容しない。なんという横暴な行為
フェアなルールを作ったつもりでしょうが、この場合、ハンデがあってこそフェアだと思います。次回、自家発電をしても、電力会社に金を取られる話